イヤミス(九月が永遠に続けば 沼田まほかる著)

Amazonのカスタマーレビューがあまりよくないが…

私には、楽しめる作品でした。

 

といっても、ワクワク、ドキドキする「楽しさ」はありません。
あくまで、「イヤミス」としての「楽しさ」です。

 

特に「イヤ」な気分にさせる点では、他の作品よりも秀でています。

 

イヤミスのひとつのパターンとして、
「イヤな人たちに翻弄されていく、可哀想な主人公」
というのがあります。

 

これでもか、これでもか、とイヤな人が登場。
さすがに、主人公もイヤな人になってしまう。

 

「自分もあの状況下なら、主人公みたいになってしまうかも」
「主人公の行動は許されるものではないが、同情してしまう」

 

と、普通は主人公に同情できる余地があります。

 

が、『九月が永遠に続けば』は、主人公も「イヤ」な人です。

 

イヤな味を全面に出しているわけではないのですが、
イヤな味が全身からにじみ出てるような人物です。

 

感情移入できません。

 

なんだよ、コイツ」が主人公への感想です。

 

そんな感想を持ちながらも、ページをめくらせてしまう、不思議な小説です。

高校生の息子が失踪してしまうことから物語が展開

高校生になる息子と二人暮らしの佐知子。
医者の夫とは八年前に離婚。
決して納得の行く別れ方ではなかった。

別れた夫の新しい妻となったのは亜沙美。
最初は、医者と患者の関係。
7歳になる娘の冬子を連れて結婚した。

 

ふとしたことがきっかけで、
佐知子が冬子の恋人と肉体関係を持ってしまう。
佐知子にとって冬子は別れた夫の新妻の連れ子

 

読みながら「ややこしいな」と思っていたところで、
事件」が発生します。

 

佐知子の息子が失踪

 

ゴミ出しに行くといったまま戻らない。
サンダル履きのままで消えてしまった。

 

「事件」なのか?
「事故」なのか?
それとも、気まぐれ?

 

この謎がストーリーを引っ張ります。

「4日後」が読みどころ

失踪した息子を想う母親。
手がかりがないだけに、妄想だけが膨らみます。

 

失踪4日後。
衝撃の事実が語られます。

 

昔のある出来事が主人公の周りに様々な影を落としていました。

 

まだ中盤の「4日後」となっている章が、本書の読みどころです。
正確には、「イヤミス」の読みどころです。

 

とにかくイヤな気分にさせられます。

 

描写がエグい。
そこまで描くかというとこまで書かれています。

 

「凄惨で、悲惨で、残虐な事件」と言うのでは、伝わらないものがあります。
どんな事件も、具体的で、個別的です。

 

それを、「残虐な事件」といった言葉でまとめてしまっては、伝わりません。

  • どのように凄惨だったのか?
  • どのように悲惨だったのか?
  • どのように残虐だったのか?

が分からないことには、どこまでも傍観者です。

 

当事者の肌感覚を感じさせる描写
それが、本書の魅力です。

ある意味、正統派のイヤミス

読者をイヤな気分にさせると言う意味では、正統派のイヤミス小説です。

 

ミステリーの部分が、他の作品に比べると少し弱く感じましたが、「イヤ」が秀でています。

 

それだけに、ただでさえ好き嫌いが分かれる「イヤミス」ですので、
この作品もはっきりと好き嫌いが出ると思います。

 


九月が永遠に続けば (新潮文庫)

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